GitHub: mitz17/mp3-normalizer
背景
10 年くらい前に作った mp3 をふと再生したら「え、なんか音ちいさくない?」となりました。コピペの荒波に飲まれてビットレートが劣化したのかと疑ったものの、音質自体は悪くなっていない。つまりファイルそのものはまだ元気だけれど、音声レベルが不揃いなままだと今後も安心して使えない──そう実感したのがこのツールを作るきっかけでした。
対象読者
- 古い mp3 アーカイブを今も大切にしていて、音量だけさっと手直ししたい人
ffmpegの呪文を暗記していないけど、まとめて正規化したい人
前提(Python と mp3)
- Python 3.11 以上 + ffmpeg 6.x が動作する環境が存在していること。ffmpeg の導入は この Qiita 記事 を参考にして OS ごとの手順を順番にたどれば OK。
- 正規化したい
.mp3をフォルダごと用意しておき、WAV などは事前に変換しておく。
ffmpeg とは?
映像・音声を扱う OSS の名作で、CLI から形式変換やトリミング、ノーマライズを一気に処理できます。mp3-normalizer では ffmpeg の loudnorm フィルタを呼び出して LUFS を調整していますが、コマンド一発で WAV/MP3/MP4 などほぼすべてのメディアを扱える万能ツールです。GUI から触るときも裏側ではこのコマンドが動いており、パラメータを変えれば True Peak の上限やターゲット LUFS を柔軟に切り替えられます。
loudnorm のパラメータや 1pass / 2pass、True Peak、LRA など ffmpeg 側の仕組みを先に整理したい場合は、ffmpeg loudnorm 完全解説:LUFS正規化と2passノーマライズの仕組み にまとめています。
環境
- OS: Windows 11(PowerShell)で動作確認済み
- Python: 3.11.7(
python -m venv .venv推奨) - ffmpeg: 6.1 系(
ffmpeg -versionで確認) - GUI: Tkinter + ttk を素朴に使用
ゴール
- OS を問わず、誰でも同じ LUFS 正規化フローを踏める
- GUI でも CLI でも結果が揃い、履歴とログで説明責任を果たせる
- 「入力フォルダを置き換えたら音が揃う」を日常運用に落とし込む
プロジェクトの概要
- Python 3.11 + ffmpeg 6.x の軽量構成
- GUI/CLI 共通のエンジン (
processor.py) と再利用しやすいユーティリティ (utils.py) processed_history.jsonで二重実行を抑止し、mp3_normalizer.logで証跡を残すloudnorm1pass を使い、-14 LUFS / -1 dBFS をデフォルトターゲットに設定
どんな課題を解いているのか
- 古いファイルでも音質は十分なので、音量だけ揃えればまだまだ使える
ffmpegのコマンドを忘れても GUI のプルダウンで完結する- いつどのファイルを処理したかがログで追えるので、再録や差し戻しが怖くない
セットアップの流れ
git clone https://github.com/mitz17/mp3-normalizerでソースを取得python -m venv .venv && source .venv/bin/activate(Windows はActivate.ps1)pip install -r requirements.txtで依存をインストールpython main.pyで GUI、python main.py --cli ...でバッチ処理を実行- 出力ディレクトリに並んだ MP3 を聴き比べ、ログファイルで値を確認
アーキテクチャと実装メモ
gui.pyは Tkinter のFrameを積み上げ、別スレッドで ffmpeg を呼び出し UI フリーズを回避processor.pyはPath.rglob('*.mp3')で対象を探し、衝突しそうなファイルは_1,_2とサフィックスを付加-map_metadata 0で ID3 タグを保ったまま再エンコード- ログはプレーンテキストに連ね、LUFS 値や実行コマンドを丸ごと保存
コードのざっくり解説
processor.py の AudioProcessor.process_directory では、入力ディレクトリを走査して計画を立て、重複チェックと安全な出力名の生成を行っています(GitHub の該当コード から抜粋)。
for index, entry in enumerate(plan.entries, start=1):
destination = output_dir / entry.relative
ensure_directory(destination.parent)
destination = destination.with_suffix(".mp3")
destination = generate_unique_output_path(destination)
...
result = self.executor.normalize(
input_file=entry.source,
destination=destination,
target_lufs=target_lufs,
true_peak=true_peak,
)
results.append(result)
if result.success:
self.history_service.mark_processed(entry.relative, entry.size, entry.mtime)
self.history_service.save()
このループで generate_unique_output_path が既存ファイルを検知すると _1, _2 …を末尾に付与するので、デフォルト (force=False) では上書きされません。さらに HistoryService が processed_history.json にサイズ・更新日時を記録し、同じファイルを再度見つけてもスキップします。まさに「上書きしない設定なので安心」という設計です。
実際に ffmpeg を叩くのは FfmpegExecutor.normalize で、コマンド全体を整形してログに残します(コードはこちら)。
command = [
self.ffmpeg_cmd, "-hide_banner", "-y",
"-i", str(input_file),
"-af", f"loudnorm=I={target_lufs}:TP={true_peak}:LRA=11",
"-c:a", "libmp3lame", "-q:a", "2",
"-map_metadata", "0",
str(destination),
]
command_str = format_command(command)
self.logger.info("ffmpeg コマンド: %s", command_str)
completed = subprocess.run(command, check=False, capture_output=True, text=True)
subprocess.run の戻り値で成功/失敗を判断しており、GUI のログ欄にも同じコマンド文字列が流れるため、裏で何をしているかが一目で分かります。
GUI の操作感
- 入力・出力ディレクトリを指定すると、対象 MP3 がリストでずらっと表示されます。
- LUFS と True Peak を入力。迷ったらデフォルト(-14 / -1)のままで OK。
- 再帰チェックや再エンコード強制のトグルで挙動を調整。
- 「実行」を押すと進捗ログが流れ、完了すると結果をスクロールなしで確認できます。

GUI 全体をざっくり再現したモック。入力/出力、ターゲット LUFS、対象ファイル、ログまで 1 画面で見渡せます。
まとめ
- Tkinter × ffmpeg という素朴な構成でも、音量正規化の面倒くささはかなり解消できる
- 古い mp3 をまだまだ使いたい人は、ぜひ
mp3-normalizerをクローンして遊んでみてください!
2026-03-04 修正追記
mp3-normalizerを直列処理から並列処理対応に変更し、処理速度を大幅改善。- 実測で 145 件の MP3 処理が 670 秒から 207.3 秒になり、約 3.23 倍高速化(約 69.1% 短縮)を確認。(4並列)
- 設定可能なCPU並列数の上限はお使いのCPUのコア数の上限としています。
- あわせて ffmpeg 出力の文字コード処理を堅牢化し、Windows 環境での文字化け由来の失敗を起こしにくくしました。
2026-03-05 修正追記
- 失敗点:
ffmpegによる正規化時、歌詞タグの埋め込み・維持ができないケースを確認
- 対応:
- mutagenライブラリを用いて正規化後ファイルへ、元ファイルの歌詞タグをコピーする処理を追加
- 影響:
- 正規化後も歌詞タグ情報を保持可能
2026-03-08 修正追記
静かなイントロで始まる曲のイントロ部分の音量が増大してしまう問題に対処しました。
入力ビットレートを検出できた場合は、可能な限り同等のビットレートで出力するよう改善しました。再エンコード時の意図しない劣化を避けやすくしています。
入力対象の拡張子を選べるようにしました。
mp3以外の音源もまとめて扱いやすくしています。出力形式も、
mp3/aac/flac/wav/oggを選択可能にしました。workersの二重指定を解消し、並列数の管理を一本化しました。GUI と CLI で設定経路が分かれていても、最終的な扱いは同じになるよう整理しています。アートワーク保持も強化しています。
ffmpeg側のマップ調整に加え、後段のタグ移植も組み合わせる二段構えにして、埋め込み画像が落ちにくいよう見直しました。なお、この記事では全体像を優先しているため、
ffmpegコマンド自体の細かい意味や 2passloudnormの引数設計は ffmpeg loudnorm 完全解説:LUFS正規化と2passノーマライズの仕組み にまとめています。